The die is cast SeasonⅡ

ロックン・ロールを奏でるスナフキンになりたかった

二宮金次郎とツチノコの寓話「剥き出しの鉄骨に描かれた、あるいは忘れ去られた二つの神話」

完璧な偶然なんていうものは存在しない。

 

少なくとも

 

僕が知る限りでは。

 

それはある静かな午後のことだった。

 

僕は古い建物の

 

おそらくは誰も見向かないであろう鉄骨の片隅に

 

奇妙な絵画を見つけた。

 

いや

 

正確に言えば

 

それは絵画ではなく

 

歳月が鉄の表面を削り

 

浮き上がらせたただの錆の塊に過ぎなかった。

 

 

しかし

 

そこに宿るコントラストは

 

並大抵の画家に描けるものではなかった。


画面の左下には

 

背中に薪を背負い

 

静かに歩みを進めながら書物に目を落す少年がいた。

 

誰もが知っている

 

あの二宮金次郎だ。

 

キーワードを並べるなら「勤勉」あるいは「正しい日常」の記号。

 

そしてその右上

 

少し剥がれかけた錆の天井からは

 

太く短い奇妙な輪郭を持った幻の生物――ツチノコが

 

静かに地上を見下ろしている。

 

昭和の少年たちを熱狂させた

 

決して捕らえることのできない「不確かに広がる非日常」の象徴が

 

そこにはいた。

 

一つの錆びた四角い宇宙の中で

 

その二つの神話が

 

奇妙な調和を保って並んでいる。


金次郎は

 

すぐ頭上に幻の生物が潜んでいることなど気づきもしない様子で

 

ただ黙々と本を読み続けている

 

そしてツチノコもまた

 

彼を脅かす風でもなく

 

ただそこに存在する一つの確かな風景として

 

静かに息を潜めている。

 

 

「君は

 

そんなに急いでどこへ行くんだい?」


頭上のツチノコは

 

あるいはそんな風に問いかけているのかもしれない。


「完璧な知識なんてどこにもないのに

 

どうしてそんなに熱心にページを捲るんだ?」

 

金次郎は答えない。

 

彼はただ

 

鉄が完全に朽ち果てるまでの長い旅路を

 

一歩ずつ進むだけだ。

 

僕たちはいつの間にか

 

校庭の金次郎を忘れ

 

草むらのツチノコを追いかけることもやめてしまった。

 

効率と実用性が支配する現代のシステムの中で

 

彼らは居場所を失い

 

こうして古い鉄骨の錆の中に身を寄せ合っているのかもしれない。

 

日常と非日常。

 

勤勉と幻想。

 

交わるはずのなかった二つの影が

 

酸化していく鉄の上で静かな対話を続けている。

 

その様子は

 

まるで落日の帝国を眺めながら飲む一杯の古いワインのように

 

僕の心に微かなshadow を伴った奇妙な余韻を残すのだった。

 

僕はポケットからiPhoneを取り出し

 

その静かな電子音とともに画面の上の偶然を切り取った。

 

それから

 

手の中にある現実の車のキーをひとつ

 

確かめるように握り直した。

 

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