The die is cast SeasonⅡ

ロックン・ロールを奏でるスナフキンになりたかった

松屋@福山「人気のデミグラスハンバーグ定食メニュー、あるいは牛めし屋が提供するもう一つのリアリズムについて」

福山の街を車で走り

 

松屋 福山東店の駐車場に車を止める。


僕と松屋の付き合いは長い。

 

けれどその歴史は

 

ほとんど「牛めし」という単一のメニューによって構成されていた。

 

 

券売機の前で

 

僕はふと思い立って

 

「デミグラスソースハンバーグ定食」のボタンを押した。

 

店内を見渡すと

 

牛めしを食べているのはむしろ少数派だった。

 

多くの人々が

 

それぞれの定食と向き合い

 

静かに箸を動かしている。

 

食券を手に席で待っていると

 

人工音声が僕の番号を告げた。


僕は席を立ち

 

カウンターへ料理を取りに行く。

 

トレイの上には

 

一つの完結したシステムが提示されていた。

 

 

かつて「牛めし」は

 

彼らにとって唯一無二のアイデンティティだった。

 

しかし時代の潮流とともに

 

彼らはその定義を静かに書き換えたのだ。

 

「牛めし屋」という看板の裏側に

 

「総合定食屋」としての強固なロジックを滑り込ませることで。

 

それは単なる選択肢の拡張ではない。

 

牛めしで培った迅速さと効率という骨組みを維持したまま

 

定食という名の多層的な物語を構築する試みだ。

 

その結果として生まれたデミグラスハンバーグの濃密な塩気は

 

現代という砂漠を歩く僕たちの空腹を

 

有無を言わさぬ暴力的なまでの確信を持って満たしていく。

 

 

まずはデミグラスハンバーグを一口。


それは

 

驚くほど濃い味だった。

 

デミグラスソースというよりは

 

一つの強固な意志を持った塩味とコクの集積体といった趣がある。

 

正直に言って

 

僕には少しキツすぎるようにも感じられた。

 

 

しかし

 

そこで救いとなるのがセットの生野菜だ。


僕は迷わず

 

白ドレッシングをたっぷり回しかけた。

 

シャキシャキとした野菜の冷たさとドレッシングの酸味が

 

ハンバーグの重厚なソースを中和し

 

味覚のバランスを再び正しい場所へと引き戻してくれる。

 

この生野菜とドレッシングこそが

 

松屋の定食という迷宮におけるアリアドネの糸なのだ。

 

 

最後の一口を平らげ

 

僕は食器を返却口へと運んだ。


五月の風が

 

濃いソースの余韻を優しく拭い去ってくれる。


次は

 

また別の定食を試してみるべきだろうか

 

それとも

 

いつもの牛めしに戻るべきだろうか。

 

ごちそうさまでした。

 

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