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羽田を飛び立ち
いくつかの空を越えて
僕は再びザルツブルクの地に降り立った。
まずはモーツァルト広場へと足を運び
台座の上で静かに街を見守る彼のブロンズ像に
心の中で挨拶を済ませる。

空は高く
空気はひんやりと乾いている。
そこから歩を進めカピテール広場へ。
巨大な黄金の球体「Sphaera」の向こうに
ホーエンザルツブルク城が
街を見下ろす孤独な番人のように聳え立っている。

この場所から見上げる城塞の姿はいつ見ても圧倒的だ。
その城塞へと続く坂道の途中に僕が目指す場所はある。

「Stiegl-Keller(シュティーグル・ケラー)」
1492年——コロンブスが新大陸に到達したその年に創業した伝統ある醸造所
シュティーグルの直営レストランだ。
アーチに掲げられた「Zum Garten u. Terassen(庭園とテラスへ)」の文字が
歴史ある空間への入り口を指し示している。

店内に入ると
鹿の角の装飾と重厚なシャンデリアが僕を迎えてくれた。
入り口に置かれた「STOP」の案内板が
ここが人気店であることを物語っている。
そこには
長い年月が積み上げてきた静かな秩序のようなものが漂っている。

何はともあれ
まずは無事の到着を祝わなくてはならない。

最初に注文したのは「Stiegl-Hell」
「Hell」はドイツ語で「明るい」を意味する。
その名の通り澄み切った黄金色の液体は
長旅で乾いた喉を
驚くほど素直に
そして鮮やかに潤していく。

まず運ばれてきたのは「Zwiebel-Bier-Cremesuppe mit Croûtons 」
玉ねぎの甘みとビールの微かな苦みが溶け合ったスープだ。
海外のスープにありがちな塩辛さはなく
深みのある優しい味が旅に疲れた胃を温めてくれる。

ビールを「Stiegl-Goldbräu」へとスイッチする。
シュティーグルの看板とも言えるこのラガーは
麦芽の豊かなコクが特徴だ。
これからやってくる重いメインディッシュを受け止めるための正しい準備と言える。

「Krustenbratl vom Strohschwein mit Stiegl-Biersaft, Serviettenknödel & Speckkrautsalat」
ビールソースを纏った豚のローストは野趣に富みながらも洗練されている。

「Original Wiener Schnitzel vom Milchkalb mit Petersilienkartoffeln & Preiselbeeren 」
仔牛の肉を薄く叩き黄金色に揚げたオーストリアの象徴
パセリポテトとクランベリーソースが添えられている。
この甘酸っぱいソースが肉の脂を中和し
思考をクリアにしてくれる。

ここで僕は
Stiegl-Paracelsus Bio-Zwickl(シュティーグル・パラケルスス・ビオ・ツヴィックル) を召喚した。
中世の医学者の名を冠した無濾過のオーガニックビール。
口当たりはマイルドで濃厚
しかし
後味にはホップが効いたすっきりとした辛口が顔を出す。
まるで複雑な内面を持つ旧友と再会したような不思議な納得感がある。

そして仕上げは「Gebackene Blutwurst mit Erdäpfelsalat」
ブラッドソーセージを揚げたものだ。
ナイフを入れると、濃厚な断面が現れる。

その重厚な味わいが
無濾過ビール「ツヴィックル」と完璧に共鳴する。
嘉味!
店を出ると
ザルツブルクの風が少しだけ優しく感じられた。
体内には確かな熱量と
少しばかりのアルコールがもたらす静かな調和が満ちている。
さあ
明日から1週間頑張ろう。
Festungsgasse 10, 5020 Salzburg, オーストリア ℡+43662842681


